HRテック最前線!人材事業を営む4社が語る、HRサービスへの取り組みとこれから

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HRテック最前線!人材事業を営む4社が語る、HRサービスへの取り組みとこれから

10月11日(火)19時30分より「【IBS×ギークス×スカウター×ネオキャリア】HR×テクノロジー勉強会 Vol.3」が開催されました。

会場にはHRテックに興味を持つ100名近い参加者が集まりました。今回が第3回目となるHRテックのイベントですが、参加者のほとんどは初めてdots.へお越しいただいた方々です。

当日の登壇者とテーマは以下の通り。

「入社半年のエンジニアによるHITO-Talent開発現場レポート」
株式会社インテリジェンスビジネスソリューションズ 山本寛人さん

「オンライン × オフラインでドライブさせるエンジニア向けHR事業」
ギークス株式会社 萩原愛梨さん

「週に2〜3社しか開拓できなかった新しいHRサービスが週に15社の企業を開拓できた施策とは」
株式会社SCOUTER 植木大介さん

「AI(人工知能) × HR Tech:労働人口の減少に備えた優秀人材の定着」
株式会社ネオキャリア 東出康義さん

それでは早速イベントの内容を紹介します!

入社半年のエンジニアによるHITO-Talent開発現場レポート

1人目の登壇者は、株式会社インテリジェンスビジネスソリューションズの山本寛人さん。電飾を身にまとった山本さんは、某テーマパークのテーマソングをBGMに会場内を1周し、参加者と次々に握手を交わしながら登壇します。dots.でも類を見ないこの演出に会場からも思わず笑い声が聞こえます。

山本寛人(やまもと・ひろと)/株式会社インテリジェンスビジネスソリューションズ HRソリューション開発グループ エンジニア。1983年生まれ。三重県出身。前職の労働環境がブラック気味だったことから転職を決意。2016年、インテリジェンスビジネスソリューションズに入社。特技はけん玉。

異色の入場で参加者の視線を釘付けにした山本さんは、前職ではウェブ制作を受託するベンチャー企業に勤めていました。しかし、「休日未確定」「残業代なし」「無駄に長いミーティング」を始めとする多くの職場の環境に疑問を感じていました。さらに、「もっとモダンなウェブ開発を目指したい」との理由で、2016年の春より株式会社インテリジェンスビジネスソリューションズに転職します。今では、多くの優秀なエンジニアとも活発な交流が取れるようになり、「新技術に積極的に取り組みやすい環境で働けている」と山本さんは語ります。

山本さんが開発に携わっているのは、タレントマネジメントシステム「HITO-Talent」。このサービスは、会社の人材を適材適所で生かし、育成するための支援ツールです。

「タレントマネジメント」とは、「人」に関連する情報をデータ化し多角的に分析・活用できるようにすることで、「適切な人材抽出」や「キャリア形成実現支援」に繋げる取り組みのことをいいます。

その起こりは、2000年代半ばの欧米です。複雑なグローバルマーケットで闘える人材を発掘・育成していくことに主眼を置いたタレントマネジメントは、内需においてこれ以上発展が望めない欧米型企業を中心に取り組まれていきました。一方、国内マーケットが比較的大きい日本では早い段階では浸透しませんでした。しかし、2010年代以降、日本企業のグローバル化が進むことで徐々に広まっていきます。

そもそも、日本と欧米では人事制度に大きな違いがあります。欧米では決められた職務での雇用契約を行う「職務ポスト型」を取るのに対し、日本は部門異動で様々な職種を経験する「総合職型」を取る傾向にあります。

そこで日本企業の特徴に適した人事戦略を今後取っていくためには、「人材の総合力把握」と「キャリアアップ醸成」の機能を有したサービス開発が重要となってくると山本さんはいいます。そして、この日本型人事システムに合わせたタレントマネジメントシステムの確立を目指すのが「HITO-Talent」なのです。

「HITO-Talent」は、グループ会社を含め10社以上で導入実績があり、3万人強のユーザーに利用されています。

同システムは、権限管理など複雑で細かい日本人事に合わせた機能を強みとし、他システムとの連携機能も持ち合わせています。今後は日本型のタレントマネジメントシステムのモデルサービスとしての確立を目指していくそうです。

オンライン × オフラインでドライブさせるエンジニア向けHR事業

続いて2人目の登壇者はギークス株式会社の萩原愛梨さんです。

萩原愛梨(はぎわら・あいり)/ギークス株式会社 クラウドエンジニアリング事業本部サービス広報。九州大学経済学部出身。2015年、ギークス株式会社へ入社。愛称は「はぎー」。

萩原さんが所属するギークスでは、フリーランスのエンジニアに向けた案件検索サイト「ギークスジョブ」を運営しています。「ギークスジョブ」は、「フリーランスエンジニア」と「企業のプロジェクト」とのマッチングを行うサービスです。

現在91.9万人いるといわれているエンジニア人材のうち、フリーランスの人材は16%ほど。割合的にはさほど多くないように思えますが、2016年度は前年比17%増とフリーランス人口は増加傾向にあります。「ギークスジョブ」に集めたいのはこのフリーランスのエンジニアです。

当初は、単にウェブ広告を打つことで「ギークスジョブ」に人を集めようとしたといいます。はじめこそ順調に集まったものの、CPAが当初の予算と比較して162%もの乖離が出てしまいました。流入数を増やせばコストがかかり、コストを抑えれば流入数が増えないという状況で、思うような成果は得られませんでした。

そのため、「フリーランスになる」「転職をする」というユーザーの決断を改めて考え直し、「徹底的にエンジニアフレンドリーな環境をつくっていこう」と目標のもと施策を打ち始めていきます。具体的には「アイデア」と「マンパワー」を重視し、オフラインとオンラインの2つの観点から施策を行いました。

オフライン施策として取り組んだのは、社内フリースペースをエンジニア向けイベントスペースに活用した「21cafe」。その運営方針は「無料貸し出し」「営利目的NG」「運営フォロー」の3つ。

「21cafe」の認知を獲得する活動も積極的に行い、2013年オープン以来利用者は7,000名を超えています。他部署とのスペース使用の調整では難しい部分もありながらも、リアルなコミュニケーションの場を持つことで次の4つのメリットがあったと萩原さん。

  • ギークスを知ってもらうきっかけに(→ウェブ広告では出会えない層との出会い)
  • クライアント候補企業の担当者とも会える
  • 新規登録者だけでなく、既存登録者との接点も獲得できる
  • ゲーム開発などもしているため、自社のエンジニア採用にとっても有用

オンラインでの施策としては、2014年6月に情報メディア「ギークスマガジン」をオープンさせました。

まず編集部を立ち上げ、リアルイベントを実施したり、エンジニアライターのスカウトを精力的に行いました。エンジニアフレンドリーに徹し、記事の量より質を重視したことでPVは1年で200%増を達成しました。「ギークスマガジン」から「ギークスジョブ」へのコンバージョンも1年で2倍となりました。

ちなみに、人気コンテンツであるインタビュー企画ではインテリジェンスのエンジニアである大谷も出演させていただきました。

オフラインとオンラインの施策を組み合わせ、相互に継続的な接点を持たせることは「ギークスジョブ」にも良い影響を与えています。広告施策以外からの流入数は4倍に増加し、ブランディングの点においても資産を築くことができました。

これらの成功から「キャリアを変えるという人生の大きな決断に携わる仕事は貴いと改めて思った」と萩原さんは語ります。

今後の展望として、同社が運営するエンジニア向けポートフォリオ作成サービスの「SPECH」と「ギークスジョブ」を連携させて、ユーザーが長く利用できるサービスにしていくなど、徹底的にエンジニアフレンドリーを貫き、エンジニアが働きやすい環境づくりに注力するとのことでした。

週に2〜3社しか開拓できなかった新しいHRサービスが週に15社の企業を開拓できた施策とは

3人目に登壇したのは株式会社SCOUTERの植木大介さん。日本初のソーシャルヘッドハンティングサービスとして2016年3月31日にリリースしたばかりの「SCOUTER」。当初は週に2、3社しか開拓できなかったそうですが、今では週に15社を開拓できるように成長したそうです。植木さんは、その施策を失敗談も交えながら話してくれました。

植木大介(うえき・だいすけ)/株式会社SCOUTER 広報/toBマーケティングマネージャー。1992年、滋賀県出身。南山大学卒。HR関連企業での勤務を経て、2016年4月にSCOUTERへ参画。学生時代にはヒッチハイクで旅をした経験も。

「SCOUTER」は、「SCOUTER」による審査を通過したユーザーが友人や知人を企業に紹介することで、紹介者と採用者の双方が報酬を受け取ることができる、日本初のソーシャルヘッドハンティングサービスです。

「人を紹介して報酬を得る」ことは厚生労働省の許認が必要となります。そのため、ユーザーは有料職業紹介事業許可証の資格を持つ株式会社スカウターとの雇用契約を結び、契約社員として活動することになります。

同社の中島代表は、人材紹介業で起業して事業を運営するうちに「ある気づき」を得ます。それは自身の友人・知人の転職を仲介した場合、「誰も辞めない、かつ活躍している」ということ。ここから、友人・知人の紹介には2つの価値があるとの考えに至ります。

  • 相互理解 → その人のことを深く理解しているため、本音で相談できる
  • 友人を想う気持ち → プレッシャーを伴うため、適当な紹介は絶対できない

サービスの開発は2015年10月から始まりました。世界に目を向けてみると、ユーザーがヘッドハンターやリクルーターになるサービスはアメリカ、フランス、中国などでもスケールしてきているのが現状です。

登録したユーザーは、まず、自身の知人・友人に合う求人を探します。次に、企業に向けてその友人・知人の推薦文を執筆します。そして、見事採用が決定すると報酬を獲得できるという流れです。

この一連の流れをサポートするために「SCOUTER」では、ユーザーには次の3つのサポートを提供しています。

  • 紹介候補者ヒアリング時の飲食代(5千円まで支給)
  • プロのキャリアアドバイザーによるチャットでの相談サポート
  • 紹介した方の年収の5%を、紹介者・転職者ともに報酬として支給

現在は、約600名のユーザーが活動しており、登録企業は500社ほどに登ります。週に平均15社登録が増えているほどの好調ぶりだといいます。しかし、植木さんが参画した立ち上げ時には多くの失敗があったといいます。

植木さんは、リードを獲得するために人事向けイベント「情報交換ランチ」を企画しますが、参加者はゼロ。提案したtoBマーケティング計画案は社内でも全く評価されません。

成果を出せない中、植木さんは自分のミッションを設定し直しました。それはリードを獲得することでも、契約をとることでもなく「個人の選択肢を最大化すること」。そして、そのミッションを達成するために3つの施策に取り組みます。

1つ目は「メールマーケティング」によるリード作り。メールでも意外に企業からの反応があることに気づいたといいます。その際に、業界や規模などセグメントごとにコンテンツを用意し、文面も変えて送ります。頻度は2週間に1回程度。相手の迷惑にならないように配慮し、週1時間の運用コストで約2000社の企業に送ります。現在はホットリードを週に10件くらい獲得できており、そこからの契約率は7割くらいにまで伸びています。

2つ目は、「テレマーケティング」によるリード作り。いわゆる「テレアポ」です。当初は自社社員で行っていたのですが、効率が良くないためアウトソーシングに切り替えました。重要なのは、「コンバージョンした会社はどのような会社なのか」、「各セグメントの進捗分析」、「人事担当者に断られたとしたらその理由」など分析をすることだといいます。ここまでのデータを提示してくれる会社に委託するため、成果報酬型ではなく、初期費用がある程度かかる業者にアウトソーシングしているとのことです。

3つ目は、「営業体制の変更」。リード獲得から契約フォローまでひとりで担当することが多かった体制を、分業制に変更しました。

特定の領域だけを見ることで、個々人がいろいろな施策考えることができ、各KPIは大幅に改善されたといいます。

これら3つの施策の結果、次の2点が達成できました。

  • 少人数での安定的な契約企業数 / 求人数の増加
  • 各領域のマーケティングデータをもとに担当ごとの分野で改善

今後も「SCOUTER」は転職者に徹底的に寄り添い、人生の大きな選択である転職において最良の選択ができるよう、人間のサポートを介入させることで支援していきたいと植木さんはまとめました。

AI(人工知能) × HR Tech:労働人口の減少に備えた優秀人材の定着

最後の登壇者は、株式会社ネオキャリアの東出康義さんです。東出さんはネオキャリアが提供する人事データを横断して一気通貫で管理できる「jinjer」について紹介します。

東出康義(ひがしで・やすよし)/株式会社ネオキャリア 経営企画部 事業開発室 マネージャー。株式会社ネオラボ 執行役員兼CMO。1985年生まれ。2009年、ニューヨーク州立大学ジェネセオ校卒。SEOを専門とする企業などでの勤務を経て、2015年にネオキャリアへ参画。

東出さんは「今後は人事が重要な時代になる」と説明します。

これまで産業の中心は、企業が設備に対してどれだけ投資できるかが競争優位性のキーとされてきました。しかし、現在はインターネットの台頭により、競争優位性のカギは人材にシフトしてきています。市場の環境も成熟経済へと移り、人事の役割にも変化が求められているのです。そこで、人事担当に今後求められることとして、東出さんは次の4つを挙げます。

  • 事業戦略の理解
  • 人事データにもとづく経営の提言、現場への介入
  • 人事を取り巻く環境の変化への対応
  • 人事オペレーション業務の軽減

人事周辺環境の変化は、他にも見られます。高齢化に伴い、労働人口が減ってきていることに加え、人材の離職コストは前任者の年収の87%にも及ぶとの調査も出ています。こうした負の連鎖を断ち切るために、人事担当は採用した人材をいかに定着させ、将来の経営発展を見越した育成ができるかをミッションに掲げなくてはなりません。

人事と一言でまとめても、「新卒採用」「中途採用」「教育研修」「勤怠管理」「評価」などなど様々な分野に分かれています。これまでは、その各分野によって管理方法が異なるため、横断的に全てをシステム化するには高いコストがかかっていました。

この課題をクラウド型のプラットフォームとして、一気通貫で提供するのが「jinjer」です。人事データを一元管理し、全社的に利用することで次のようなメリットがあると東出さんは説明します。

■人事担当者へのメリット

  • 実務の工数削減 → 月末月初に勤怠データを給与明細に落とし込む作業量の削減が達成できる
  • 担当が替わる際の引継ぎの簡易化
  • 人事関連業務のコスト効率化

■人事責任者へのメリット

  • 人事部の生産性向上 → 実務に割いてた時間を戦略的な部分に使う人事チームを組める
  • 分析精度の向上
  • 従業員エンゲージメント向上

■経営者へのメリット

  • 情報可視化による戦略立案
  • 活躍する人材の明確化
  • ビッグデータから最適解を提示

「jinjer」では、機能ごとにPMを置き、国内は80名ほどの体制で開発しています。さらにベトナムにオフショア開発チームがあり、安いコストで優秀なベトナム人材を上手く活用しています。

現在の「jinjer」開発においてもっとも注力しているのが「AI×勤怠管理」の領域。具体的には、機械学習を搭載し、従業員のモチベーションが落ちるときにアラートを鳴らす勤怠機能を備え付ける開発をしています。

例えば、テレビでも取り上げられた「笑顔判定機能」。勤怠の打刻をする瞬間に顔を撮影して点数化し、目尻や口角の記録を取ります。すでに2万人ほどのデータを蓄積しており、機械学習を通して従業員の変化を判定しているとのことです。

これらの人材定着に対する取り組みは、コスト面や労働人口減少問題のリスクを未然に防ぐ役割を果たすため、今後さらにその重要性が高まる領域となっていくことが予想されます。東出さんは従業員のデータを一気通貫で管理し、次に打てる人事戦略のレコメンデーションを出す重要な役割を「jinjer」が担っていきたいと語りました。

懇親会!

4名による講演の終了後は、懇親会のスタートです!

会場にはピザとドリンクが用意されました。

登壇者や参加者同士での交流は熱をおび、あっというまに懇親会の時間も流れていきました。

第4回のHRテックのイベントもお楽しみに!

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